第11回高校生バイオサミット
受賞者一覧


文部科学大臣賞

鳥取県立鳥取西高等学校
グループ名:自然科学部
「スナヤツメの砂泥中での行動を音響解析で「見る」」 石川県立七尾高等学校

<講評>
スナヤツメが泥に潜る際に行う特異的な行動様式を独自に発見し、この生態行動を音響解析によって見事に可視化・定量化した研究です。泥に粘性を近づけた透明なゲルの中での行動と音響解析による結果が一致することも示しています。本研究で確立された音響解析とゲルを組み合わせる手法は、スナヤツメに限らず泥の中に生きる他の生物の行動の可視化にも応用できる可能性があり、大変優れた内容であることから、文部科学大臣賞に相応しいと判断しました。



厚生労働大臣賞

学習院女子高等科
中原 杏菜
「関節リウマチマウスに対する ショウガ/ミョウガ抽出物の治療効果比較検証実験」

<講評>

本研究は、近年増加しているリウマチを食べ物で治療することを目指した研究です。

先行研究ではショウガの有効性が示されていたところ、

ショウガと同属で、日本のみで食用栽培されているミョウガに注目し、有効性を検討しました。

関節リウマチのモデルマウスを用いて実験した結果、ミョウガには、

ショウガと同等もしくはそれ以上のリウマチ改善効果があることを明らかにしました。

ミョウガは家庭での栽培も容易であり、本研究の成果は

生活に取り入れられる新たな補助療法として期待されることから、

厚生労働大臣賞にふさわしいと評価されました。




農林水産大臣賞

世田谷学園高等学校
宇田津 朗
「東京都お台場海浜公園付近の赤潮珪藻を用いた養殖用飼料化への試み」

<講評>
環境問題のひとつである赤潮を、養殖用飼料としての有効利用を検討した意欲的な研究で、水産業の振興に大きな寄与が見込まれるテーマです。赤潮に含まれる珪藻類に養殖用飼料に必須のEPAやDHAが含まれることから、魚粉代替としての利用を発想し、実際にテナガエビへの給餌試験を行うことで、飼料としての有効性も明らかにしました。本研究は食料問題の解決に加え、水産業に関する環境問題の解決も期待され、農林水産大臣賞にふさわしいと判断しました。



経済産業大臣賞

山形県立酒田東高等学校
菅原 さくら
「プラスチックを分解する海洋微生物の探索」

<講評>
本研究では、プラスチックを利用して増殖する海洋微生物を見つけることに成功しました。海洋微生物の探索のために綿密な先行研究調査や独自の情報学的解析を行い、実験ではプラスチックの影響の解析に適した培養条件を用いるなどの工夫が凝らされていました。本研究で用いた微生物や解析手法は、海洋プラスチック問題の解決に向けた新たな微生物技術のシーズとなることが期待でき、経済産業大臣賞にふさわしいと評価しました。



環境大臣賞

宮崎県立宮崎北高等学校
グループ名:科学部カニ班
「STFTによるハクセンシオマネキ(Uca lactea)の理想的な求愛ダンスの解析 -求愛に成功するオスは,休まずに一定の速さで大きなハサミを振る-」

<講評>
本研究は、ハクセンシオマネキの求愛ダンスに優劣があることに着眼し、膨大な動画データの分析から理想的な求愛ダンスの法則を見出した独創的な研究です。本研究に専用の解析プログラムを自作して行動を定量化することに成功し、個体間の距離、位置関係、フェロモンの影響など、多角的な分析から説得力のある結論を導きました。本解析手法は他の生物種にも適応できる可能性があり発展性も期待できます。自然環境と生物多様性に関する新たな知見が得られた研究であり、環境大臣賞にふさわしいと評価されました。




科学技術振興機構賞

埼玉県立松山高等学校
グループ名:プラナリア有性化班
「テストステロン投与によるプラナリアの有性化誘導の効果」

<講評>

本研究は、未だ解明されていなかったプラナリアの有性化誘導に必要な物質について探究し、テストステロンの投与により有性化誘導が可能であることを示しました。

研究目的に沿ってしっかりとした実験計画を立て、着実に説得力のある結果を出していることは高く評価できます。発生学および生態学それぞれにおいて大変重要な発見であり、今後の科学技術の発展に寄与する可能性があることから、科学技術振興機構理事長賞に相応しいと判断しました。




慶應義塾賞

東京大学教育学部附属中等教育学校
河野 百羽
「光による植物の根の緑化現象の発見」

<講評>

シロツメクサにおいて、光によって根の緑化現象が起きることを証明した研究です。

明快なテーマ設定、適切な実験系の構築、得られた実験データのていねいな記録と解釈など、研究の全ての段階において達成度が高く、プレゼンテーションも分かりやすく説得力のあるものでした。

質疑応答では、生育環境を根拠にした考察を示すなど、研究テーマに関する理解度の高さが随所でうかがえました。

今後の展開にも期待がふくらむ研究であり、未来を先導する独創的な研究に贈られる、慶應義塾賞にふさわしいと判断しました。




山形県知事賞

長崎県立長崎北陽台高等学校
グループ名:生物部
「マツバクラゲの群体性ポリプの発見とその生活環について」

<講評>
本研究は、長崎県の大村湾で貝の一種であるアラムシロの殻表に群生する謎の生物を発見し、これがマツバクラゲのポリプの群体であることを、形態観察とDNA解析によって初めて証明しました。また、このマツバクラゲがアラムシロに選択的に着生し、他のマツバクラゲでは見られないユニークな生活環を形成していることを解明するなど、身近な海洋生物の観察から研究の着想を得て、様々な実験手法を駆使して多くの新発見につなげたことが高く評価されました。今回発見されたマツバクラゲとアラムシロの共生関係は大村湾固有のものである可能性があり、さらなる研究の発展により、今後の地域活性化および環境保全への貢献が期待されることから、山形県知事賞の授与を決定しました。




山形県教育委員会教育長賞

安田学園高等学校
グループ名:生物部
「クロマルハナバチの死体排除行動と死体認知の仕組み」


<講評>
クロマルハナバチは、感染源となり得る巣内の死体を巣外へ追いやりますが、本研究では死後に減少する体表物質が死体の排除⾏動を誘発している可能性があることを突き止めました。死後経過時間の異なる死体を使用する、体表を有機溶剤で洗浄するなど、実験条件もしっかりと練られており、結果に対する考察もしっかりと行われていました。今後の進展も大いに期待される研究で、山形県教育委員会教育長賞にふさわしいと判断しました。




鶴岡市長賞

山形県立鶴岡北高等学校
坂本 夏菜
「外来沈水植物と在来沈水植物の環境特性の差について 〜オオカナダモとクロモの様々な比較〜」


優秀賞

東京学芸大学附属国際中等教育学校
グループ名:太刀魚研究チーム
「魚の光反射物質の抽出と安定化及び利用」

山村国際高等学校
グループ名:オリごはん
「フラクトオリゴ糖はエリュシペロトリクス綱細菌の増殖を抑制し、ラクノスピラ科細菌を増殖させる」

東京大学教育学部附属中等教育学校
多田 美羽
「ベタの威嚇行動フレアリングを引き起こす鍵刺激の探索」

埼玉県立松山高等学校
グループ名:3年プラナリア班
「ナミウズムシの遺伝的多様性と種分化」

京都府立亀岡高等学校
グループ名:自然科学部
「藁はツバメの巣の接着強度と耐久性を上げるのか」

清風高等学校
グループ名:生物部シロアリ班
「ネバダオオシロアリの魚粉代替利用としての可能性~シロアリが日本を救う!?~」

私立穎明館高等学校
数見 太勇
「ツシマサンショウウオとカスミサンショウウオの環境への適応と生殖的隔離」

成蹊高等学校
坂内 環
「短期記憶をよくする音楽の特徴」

同志社国際高等学校
成田 桃子
「ケフィアペプチド摂取による腸内環境変化を介した更年期うつの予防及び改善効果の検討」

東京学芸大学附属国際中等教育学校
本田 詩歩
「模擬火星土壌を用いた乾燥耐性トウモロコシの異なる水分条件での栽培と栄養価の変動」


以上10点、順不同



審査員特別賞

埼玉県立松山高等学校 宇津木 祐哉
横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校 江藤 毬花
宮崎県立宮崎北高等学校 黒木 美花
群馬県立利根実業高等学校 星野優里華
石川県立七尾高等学校 政氏 貴仁
埼玉県立松山高等学校 松本 陽彩
清風高等学校 柳谷 和音
京都府立亀岡高等学校 山口 友雅
清風高等学校 横川 智之
長崎県立長崎北陽台高等学校 宮﨑 諒太
カリタス女子中学高等学校 石川 小花
実践女子学園高等学校 石田 新夏
山脇学園高等学校 海老原楓果
開智高等学校 奥山 悦幸
京都府立亀岡高等学校 小林 彩葉
田園調布学園高等部 野池 はな
淑徳高等学校 堀口 真菜
石川県立七尾高等学校 綿谷 結太


以上18点、順不同

他に、優秀研究指導者表彰が3点贈られました。