4th
第4回大会(2014年度)
受賞作品一覧
文部科学大臣賞
粘菌はいかにして餌を見つけるか
内田 瀬奈
横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校
<講評>
脳も神経もない粘菌がどのように餌を認識して合理的に行動できるのか?という疑問を解決するため、仮説を立てて実証実験を展開している興味深い 研究である。粘菌が餌と水分のどちらを優先するか調べるため、独自にさまざまなパターンの経路をデザインして検証していた点は高く評価できる。
また、においを認識する分子メカニズムを解明するため、粘菌に含まれるタンパク質の解析に挑んだ点もすばらしい。創意工夫が認められる学術研究であり、文部科学大臣賞に相応しい。
農林水産大臣賞
食品廃棄物を劣化防止用の添加物として活用する研究
田原 早央莉
米子工業高等専門学校
<講評>
国内消費量が多い卵から出る廃棄物の卵殻膜を、身近な食品であるアボガドの褐変を指標に、その活用方法を生化学的に調べた興味深い研究である。昨年度までの食品添加剤としての問題点を精査し、食品を覆うことで酸化を防止する利用方法を見出し、それを様々な方法を用いて検証したことは高く評価できる。実験方法も確立されており、得られたデータに対する考察も 的確である。食品の劣化抑制は農作物などの生産者だけでなく、調理・加工、流通に関わる多くの分野において重要な課題であり、卵殻膜の新たな機能がこれらの産業に与える影響も期待できる。本研究は農林水産および食料に関する優秀な研究であり、農林水産大臣賞に相応しい。
環境大臣賞
アトピーの海水治療の科学的根拠の解明
伊藤 光平
山形県立鶴岡南高等学校
<講評>
アトピー性皮膚炎を起こした部位を海水に浸したときに、皮膚に住む微生物の内訳がどう変わるか調べた研究である。伊藤光平君は、海水に浸した左腕と、何もしなかった右腕について、皮膚に生息している微生物の内訳を比較した。その結果、何もしなかった右腕では、炎症時に増加することが知られている黄色ブドウ球菌が増えたのに対し、海水に浸した左腕では増えないことがわかった。この成果は、自然環境や多様な微生物がヒトの健康に与える影響の大きさを考える上で意義深い。よって、自然環境や生物多様性に関する優秀な研究を対象とする環境大臣賞に相応しい。
科学技術振興機構賞
キウイが持つプロテアーゼは自分自身を壊すのか?
生物部
群馬県立沼田女子高等学校
<講評>
本研究は、スーパーで市販されているグリーンとゴールドの2種類のキウイの食べ比べ試験から、グリーンキウイを食べるとアレルギー反応がでるにもかかわらず、ゴールドキウイを 食べてもアレルギー反応がでないといった、受賞者自身の実体験を背景にした低アレルゲン性キウイ調理方法の開発に向けた研究である。グリーンキウイにはたんぱく質分解酵素の一つであるアクチニジンが多く含まれており、これがアレルゲンとして作用するが、グリーンキウイを50℃で1日保温するとアクチニジンが分解されたことから、キウイを食べる際に予め50℃の熱処理を加えることで、アレルギー反応を抑制できる可能性が示唆された。50℃保温によるアクチニジンの分解機構の詳細については更なる研究を必要とするものの、低アレルゲン性キウイ調理方法の開発は、人類が抱える昨今の食物アレルギー問題を打破するべく果敢に挑戦した独創的な研究であることから、科学技術の発展に寄与する可能性のある研究に授与される科学技術振興機構賞に相応しい。
慶應義塾賞
プラナリアの条件反射
特進Activity
佐野日本大学高等学校
<講評>
本研究は、プラナリアの刺激に対する条件反射に関して、その獲得条件および刺激の関連性を詳細に解析したものである。本研究から、これまで研究されてきた電気刺激への応答に留まらず、新たに餌という刺激に対しても条件反射が獲得できることが明らかになった。また、これを利用して、本来は負の走行性を示す光への応答を正の走行性へと変化させることに成功し、プラナリアの条件反射における新たな一面を見出した。さらに、発表者は研究内容とその背景を深く理解しており、情熱を持って研究に取り組む姿勢がうかがえた。
本成果は、神経研究におけるプラナリアのモデル生物としての可能性を提示し、今後の研究発展への貢献を期待させるものであるため、未来を先導するような独創的な研究に授与される慶應義塾賞に相応しい。
山形県知事賞
「幻の花」を未来に残せ ~アツモリソウのフラスコ苗の生産を目指して~
バイテク班
長野県上伊那農業高等学校
<講評>
本研究は、「野生ランの王者」と呼ばれているアツモリソウが、乱獲や盗掘、森林の荒廃や鹿による食害により個体数が激減しているという地域の課題に対し、自分たちができるサイエンスの手法を使って解決を試みている素晴らしい研究である。このような野生植物の人工培養は、研究者でも困難な実験であり、本研究においても様々な培養条件の改良の余地がある。しかし、代表らは好奇心や探求心を持ち、試行錯誤しながら粘り強く改良を重ねて人工育成を展開しており、その姿勢は審査員から高く評価された。
山形県教育委員会教育長賞
再利用可能なクロム吸着剤の開発
生物部
埼玉県立松山高等学校
<講評>
本研究は六価クロムによる工業排水の浄化を目的とし、植物が持つタンニンの性質に注目し、独自に作成したものも含む複数の吸着剤候補にタンニンを固定しその能力を検証したものである。また、酸やキレート剤を用いてクロムを回収し、吸着剤の再利用が可能である事を示し、実用化に向けて大きく進展させた。以上の成果を鑑みると、本研究は山形県教育委員会教育長賞に相応しい。
鶴岡市長賞
遺伝子解析による、単細胞緑藻類 Chlamydomonas reinhardtiiの大陸間交雑能の証明
土田 雄大
山形県立鶴岡中央高等学校
優秀賞
新しく作成したプライマーによるメダカの遺伝子鑑定
生物部
埼玉県立松山高等学校
審査員特別賞
クスノキの葉による窒素酸化物吸収能力の検証
河原 めぐみ
市川高等学校
キウイが持つプロテアーゼは自分自身を壊すのか?
児玉 千紘
群馬県立沼田女子高等学校
ミカヅキモによる汚染水から放射性物質の除去の可能性について
佐久間 美華
福島成蹊高等学校
葉色研究法の開発 ‐セネッセンス誘導による葉色変化の短期化‐
澤田 真緒
静岡北高等学校
プラナリアの条件反射
早川 春香
佐野日本大学高等学校
プラナリアの集合性と体色変化について
渡邊 ひかり
島根県立益田高等学校
ECMゲルを用いたヒトiPS細胞由来三次元膵島組織の作成
碓井 麻理子
東京都立国際高校
マウスの音刺激によるCD4+CD25+制御性T細胞の増加
松本 哲
神奈川県立秦野高等学校